一般社団法人 九州地域づくり協会
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第13回 山と海に抱かれた人々の暮らしは、陽光に明るく輝いている。
宮崎県南の隧道・運河と橋梁群

亜熱帯性気候の南国リゾートとして知られた宮崎県の南エリア。飫肥杉が茂る山里や傾斜の強い谷筋には、郷土の安全と繁栄を願って、先人たちが歩みを重ねてきた証が、しっかりと刻み込まれている。

花峯橋

【4】花峯橋 はなみねはし


煉瓦仕上げのトンネル

山仮屋隧道

【1】山仮屋隧道やまかりやずいどう

 宮崎自動車道の清武JCTから東九州自動車道へ入り、清武ICで高速道路を降りたら、県道338号を経由して県道27号を南下する。この道が飫肥街道であり、天正・慶長年間(1574~1615年)に飫肥藩初代藩主・伊東祐兵(すけたけ)によって整備されたと伝えられる。江戸時代には物資運搬の要路であり、参勤交代にも使われたため、“殿様街道”とも呼ばれ、山中の椿山公園には街道の跡が残されている。峠近くの県道脇に明治25年(1892)、山仮屋隧道【1】が完成。全長55.6m、幅4.8m。すべての内壁部は古色がにじむ煉瓦積み仕上げ。県内初の見事な道路トンネルだが、現在は車での通行はできない。
 街道の南端、日南市飫肥は5万1千石の城下町であり、武家屋敷や白壁の商家、文化財や史跡が数多く残る。なかでも樹齢百年を超す飫肥杉を使って復元された飫肥城大手門は見応え十分である。


未来をも切り開いた運河

堀川運河

【2】堀川運河 ほりかわうんが

 日南地方は温暖湿潤の気候であり、杉の成長が早くて木目が粗く、樹脂も多い。このため浮力が大きく、耐久性に優れた飫肥杉は、江戸の昔から造船材として高く評価されていた。飫肥藩5代藩主・伊東祐実(すけざね)は船舶輸送の効率化を図るため、広渡川と油津港を直結させる堀川運河【2】の掘削を決意。2年4カ月に及ぶ難工事の末、貞享3年(1686)に全長900m、幅22~36m、両岸に石組護岸を整備した運河が完成。その後、藩財政を潤すとともに油津港の発展の礎となった。

 

堀川橋

【3】堀川橋 ほりかわばし

 この運河の港からやや上流の街中に、橋長33m、支間22mのアーチ曲線が優美な堀川橋【3】が架かる。それまでの油津板橋は大水の度に流失したため、長い間、永久橋が切望されていた。明治36年(1903)、名石工・石井文吉によって、ようやく堅牢な石造橋が架橋された。静かな運河の水に影を落す端正な石橋は、地元の人々に愛され、地域の誇りともなっている。運河のさらに上流に、現存例の少ない木造方丈形式の花峯橋【4】がある。架橋は昭和4年(1929)。橋長27m。橋脚の杉材は風雨にさらされ、味わい深い表情。人も車も通れる生活橋として現役で活躍中だ。この2橋はともに国登録有形文化財に指定されている。

日向大橋

【5】日向大橋 ひゅうがおおはし

 宮崎市と新富町の境界を流れる一ツ瀬川。その河口を渡る国道10号に架かるのが、堂々たる勇姿を見せる日向大橋【5】だ。完成は昭和29年(1954)。橋長560.8m、幅員7.4m、最大支間67m。川の流心部を支える3つのアーチ部には、曲線材と直線の橋桁材を結合したローゼ桁を採用。この形式の橋では日本最初であり、伸びやかな姿が印象的である。

 


日南海岸きらめきライン

堀切峠など

(上段)堀切峠、鬼の洗濯板 (下段)鵜戸神宮、道の駅「なんごう」からの展望

 亜熱帯気候に育まれた南国・宮崎は「日南海岸国定公園」を核とした海岸沿線エリアと、林業によって育まれた豊かな風土を受け継ぐ内陸部エリアがあり、地域一帯では沿道の人々の植栽活動が育む「うつくしの道づくり」、人々の温かさと地域の資源が育む「もてなし、いやしの道づくり」、地域の語り部が郷愁を育む「神話と歴史の道づくり」を進めている。この「日南海岸きらめきライン」の取り組みは、観光・経済・地域交流など各分野から注目を集めている。
 さらに南国特有の草花に彩られた国道220号の沿道には、海を見晴らすパノラマが爽快な堀切峠、自然の力を実感する鬼の洗濯板、神々の物語を今に伝える鵜戸神宮など、多彩な名所・史跡が点在する。また、周辺には道の駅が随所にある。


郷土愛を語り継ぐ石橋群

 宮崎県南エリアには、土木遺産に認定されてはいないが、明治以降に建造された石橋が数多く残る。その中のいくつかを紹介しよう。飫肥の城下町から国道222号を西へ。日南ダム真下の公園入口に架かるのが石原橋。【6】橋長12.9mの可憐な石造アーチ橋である。さらに西へ走り、道の駅「酒谷」を過ぎた右手の谷に、橋長22mの石造アーチ橋・大谷橋【7】が残る。壁石が斜めに積まれているのが特徴である。

石原橋

【6】石原橋 いしはらばし

大谷橋

【7】大谷橋 おおたにばし

 宮崎自動車道の田野ICから県道28号を北へ向かい、JR「田野」駅前で国道269号を東に折れて進んだ谷に梅谷太鼓橋【8】が架かる。橋長15.4mの石造アーチ橋だが、現在は廃橋だ。同国道を反対に西へ走り、七野から南に曲がった道沿いに石造アーチ橋・元野太鼓橋【9】がある。そこから、さらに南へ。高速道路の下を抜けて山に分け入ると、郷愁を誘う石造アーチ橋・黒草水路橋【10】がある。山間の里に残された石橋が、人々の郷土への愛を静かに語りかけてくる。

梅谷太鼓橋

【8】梅谷太鼓橋 うめだにたいこばし

元野太鼓橋

【9】元野太鼓橋 もとのたいこばし

黒草水路橋

【10】黒草水路橋 くろくさすいろきょう

 

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