一般社団法人 九州地域づくり協会
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第15回 流域を潤し、地域の発展を支えてきた母なる大河。
川内川流域をいく

 九州第二の大河・川内川流域は、全国でも有数の豪雨地帯である。幾度も洪水被害に見舞われたため、治水に関わる土木遺産が多く残り、南国の風土に磨かれた先人たちの技が、今も脈々と受け継がれている。
長崎堤防

【1】長崎堤防 ながさきていぼう




大河をまたぐ赤い鉄橋

 熊本県の白髪岳に源を発する川内川は、長さ126kmという九州第二の大河である。流域は非常に雨の多い地域であり、年間降水量は約2800mmと全国平均の約1.6倍にも及ぶため、頻繁に氾濫を繰り返してきた歴史がある。鹿児島県の薩摩川内市から県道43号を西へ向かうと、川内川河口から約4km上流の左岸に、長さ655mの石積みの長崎堤防【1】がある。第19代薩摩藩主・島津光久の命を受けた普請奉行・小野仙右衛門が8年もの歳月を費やし、貞享4(1687)年に完成させたもの。工事途中、幾度も洪水のため決壊を繰り返したが、水流を弱める工夫として堤防に鋸の歯のような突起部7カ所を築造し、ようやく竣工。完成後327年を経た今も現役で活躍する堤防を、小野の業績を称える顕彰碑が静かに見守っている。
 そこからやや上流の左岸、八間川に見事な江ノ口橋【2】が架かる。橋長17.3m、幅員3.4。嘉永2(1849)年に築かれた石造3連アーチ橋。石工は鹿児島市の甲突川五石橋を手掛けた肥後の名匠・岩永三五郎。この架橋を最後に、岩永は肥後に帰ったといわれている。薩摩川内市から国道3号を北上すると道の駅「阿久根」に出る。一方、薩摩川内市から国道267号を東へ走り、東郷町斧渕で県道335号へ右折すると、川内川中流の広い川幅をまたぐ東郷橋【3】に出会う。橋長149.1m、幅員5.1m。3径間下路式単純トラス鉄橋の堂々たる雄姿。完成は昭和10(1935)年。周囲の山野の緑と川の風景に橋の赤色が鮮やか映える。この県道を南へ進めば道の駅「樋脇」がある。


江ノ口橋

【2】江ノ口橋 えのくちはし


東郷橋

【3】東郷橋 とうごうはし



洪水被害を抑える工夫

穴川橋

【4】穴川橋 あなかわはし



  平成18(2006)年7月、川内川流域は洪水による甚大な被害に見舞われた。3カ月後、激甚災害対策特別緊急事業が採択され、河川の掘削や堤防の建設などの河川改修が進められた。東郷橋から国道267号を東へ走り、薩摩郡さつま町で国道504号に移って西に向かうと、川内川を挟んだ対岸に推込分水路が見える。これは洪水時の水量を分散するために開削された水路である。さつま町から国道267号を北上し、伊佐市下殿の手前で県道404号に左折すると、年間30万人の観光客が訪れる名所・曾木の滝に出る。ここにも同様の目的で築かれた曾木の滝分水路がある。2つの分水路は平成2 5(2013)年、栄えある「土木学会デザイン賞優秀賞」を受賞している。
 曾木の滝から県道404号を川内川に沿って西へ走ると、治水と発電を行う鶴田ダムが現れる。現在、洪水時の貯水量を増やすため、今ある放流管より下に、5本の放流管を新設する再開発事業が力強く進められている。
 さつま町の宮之城屋地、轟の瀬の近くの国道504号沿いに穴川橋【4】がある。橋長44.1m、幅員4.71m。大正9(1920)年に完成した石造3連アーチ橋であり、やや扁平なアーチが並ぶ姿は優しく美しい。



鉄路の安全を守る遺構

加久藤(堀切)峠

【8】加久藤(堀切)峠 かくとう(ほりきり)とうげ
(上)人吉ループ橋 (下)加久藤トンネル



 山谷を抜けて走るJR肥薩線は、線路の勾配を緩やかにするため、人工盛土の上に軌道が敷設されている。この下に河川を通すための暗渠が、沿線一帯に数多く整備されている。姶良郡湧水町栗野の南、県道55号沿いには会田川暗渠【5】がある。延長29.3m。縦長の煉瓦アーチが印象的だ。JR栗野駅裏の駐車場脇には丸池湧水暗渠【6】がある。延長67.4m。季節変動の少ない湧水量を見越して、小型断面暗渠を2本並列させたものであり、煉瓦4重巻きの2連アーチが存在感を発揮する。栗野の船渡橋の交差点から県道102号に入って北へ。延長30.7m。煉瓦5重巻きの堅牢な竹下川暗渠【7】がある。3つの暗渠はいずれも明治36(1903)年の完成。110年以上を経て大きな損傷もなく機能しており、当時の技術水準の高さに驚かされる。
 宮崎県えびの市と熊本県人吉市の境、国道221号の堀切峠には加久藤トンネル【8】(延長1809m)がある。堀切峠は昔から交通の難所であり、昭和47(1972)年に加久藤トンネルが開通するまでは、標高720mの峠をくねくねと登らねばならなかった。その後、昭和52(1977)年、トンネルの北側に人吉ループが、昭和53(1978)年、南側にえびのループが完成。交通の便は格段に向上し、両県を結ぶ幹線道路として機能している。えびのループの手前、国道268号沿いには道の駅「えびの」がある。


会田川暗渠

【5】会田川暗渠 かいだかわあんき


丸池湧水暗渠

【6】丸池湧水暗渠 まるいけゆうすいあんきょ


竹下川暗渠

【7】竹下川暗渠 たけしたかわあんきょ

 

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