一般社団法人 九州地域づくり協会
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第20回 南国鹿児島の陸海運の基盤となり、人とモノの交流を支えてきた。
 薩摩半島の橋梁群等を往く

九州の南端に位置する薩摩半島の周辺各地では、数多くの石造アーチ橋が建造されてきた歴史がある。
一方、陸路だけでなく海路の整備も意欲的に進められ、郷土発展の原動力として大きく貢献してきたといえる。

石造の荷揚施設を整備

 南九州自動車道「伊集院」ICから県道206号を市来方面へ進み、県道24号に移って西へ向かう。大田簡易郵便局の先を左折し、神之川沿いに進むと大田発電所に至る。その右手の山上に大田発電所轟(導水)隧道【1】がある。明治41年(1908)に島津家専用の発電所として稼働し、島津家が営む串木野神岡鉱山に電気を供給。発電用導水路である隧道出入口の壁面は切石積みで、石造アーチトンネルの一部が確認できる。上部の笠石には丸に十の字の島津家の家紋「くつわ紋」が彫られ、入口側の扁額には「轟隧道」の文字が刻まれている。

 県道24号から県道37号に移って吹上浜へ向かい、国道270号を南下すると、永吉川に架かる浜田橋【2】に出会う。かつては石造2連のアーチ橋だったが、大正2年(1913)に現在の石造3連アーチ橋に改築された。石材は浜田石と呼ばれる凝灰岩。橋長44mは鹿児島県内で使用されている石橋としては最長だという。

 さらに国道270号、国道225号を南下して枕崎港へ。明治末期、漁船の大型化によって防波堤と荷揚施設の整備が必要となり、大正7年(1918)に枕崎港西防波堤【3】が、昭和12年(1937)に荷揚岸壁【3】が築造された。延長530mの防波堤がほぼ原型の形で残り、巻石積みの堤体が美しいカーブを見せている。

また石積みの階段式荷揚岸壁の現存部分は、創建当時のままの姿が残されているという。
そして国道226号を東へ進み、南九州市知覧町の松ヶ浦の先から門之浦へ向かうと、加治佐川の河口にも知覧門浦荷揚場【4】がある。
竣工は昭和9年(1934)。切石積みの大規模な施設は、わずか2カ月と10日間の工期で完成したという。二段の荷揚場と昇降階段、係船柱など、いずれも古色を帯びた石造施設が良好な保存状態で、波静かな湾の奥に残されているのだ。

大田発電所・轟(導水)隧道

【1】大田発電所・轟(導水)隧道

浜田橋

【2】浜田橋

枕崎港西防波堤・荷揚岸壁

【3】枕崎港西防波堤・荷揚岸壁

知覧門浦荷揚場

【4】知覧門浦荷揚場

名工の技を伝える石橋

 国道226号を東へ走り、頴娃(えい)小学校前の信号で左折し、県道236号を上ると、鳥越隧道【5】がある。明治31年(1898)に完成した石組みトンネルは延長84m、幅員4.5m。坑口は緑の苔におおわれ、サイズをそろえた石材によってすっきりと美しい石組みが実現されている。

 再び国道226号に戻って開聞岳の北麓をめぐり、山川港方面へ。山川高校の先、セブンイレブン前の信号で右へ折れ、次の信号で左に入ると、やや小さ目の咄合(はきあい)橋【6】が道路下に見える。石造アーチを持つ合掌型桁橋であり、アーチのルーツとも言われる珍しい構造だが、架橋年代は不明である。桁石や基礎石には重厚な凝灰岩が使われ、損傷もなく極めて良好な状態に保たれている。

 国道226号を走り、指宿の街を過ぎて湊川を渡り、エネオス前の信号で左折すると湊川橋【7】が現れる。均整のとれた姿が目を引く石造アーチ橋は橋長17.15m、幅員4.01m。天保15年(1844)、肥後の名石工・岩永三五郎が施工したものと伝えられる。170年以上を経た石橋だが、現在も生活道路として活躍していることは、まさに驚きである。

鳥越隧道

【5】鳥越隧道

咄合橋

【6】咄合橋

湊川橋

【7】湊川橋

現役で活躍する石造橋

 さらに国道226号を北上し、前之浜郵便局の先で左折すると、石造2連のアーチ橋・貝底(けぞこ)橋【8】を渡る。建造は明治33年(1910)、橋長は16.2m。旧指宿街道に約100年以上も昔に架けられた橋だが、今も現役で使われている。石材には赤褐色の凝灰岩が用いられ、絡みつく緑の植物との対比が鮮やかである。

 同じく国道226号を北上し、影原の信号で国道225号に移って鹿児島市方面へ。谷山港区入口の信号で右折すると、和田川に架かる(廃)潮見橋【9】に出る。かつて主要な道路であった谷山街道に明治23年(1890)、石造3連の端麗なアーチ橋が建造されたが、老朽化のため平成18年(2006)に解体された。その2年後、現在のコンクリート橋に架け替えられたのである。

 薩摩半島地域での道の駅では、国道270号沿い、「歴史交流館金峰」に隣接した「きんぽう木花(このはな)館」、国道269号沿いにあって、海産物が豊富にそろう「山川港活お海道(いおかいどう)」、国道226号沿い、展望休憩所を併設した「いぶすき」、同じく国道226号に沿って、室内温水プールや温泉保養館を備えた「喜入」などがある。旅先で見かけた道の駅で、地元ならではの特産品や名物を探すのは、旅の醍醐味といえる。

貝底橋

【8】貝底橋

道の駅地図

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