FUKUOKA 23
第一石坂トンネル
福岡県田川郡赤村
複線化未完の
九州最古の鉄道トンネル
下半分は素掘りの岩盤
あとは全て煉瓦構造
延長33.2mの第一石坂トンネルは、延長74.2mの第二石坂トンネル(国登録有形文化財)とともに、豊州鉄道(現・平成筑豊鉄道)が石坂峠付近の大坂山の岩盤に掘削した煉瓦造隧道です。明治28年(1895)に完成し、九州最古の鉄道トンネルとして、今も建設当時の姿を保っています。下半部が素掘りの岩盤となっているほかは、全て煉瓦構造。山側の岩盤は、未掘削のまま残されています。
複線化を念頭に建設されたため扁平な馬蹄形坑口で、坑門は切石積みでアーチ部のみ煉瓦で構成され、ポータルには門柱状の意匠があります。筑豊鉄道や、小倉鉄道(現・JR 日田英彦山線)の登場により、結果的には未完のまま単線となりました。
トンネルに入ると片側だけ空間が広いのは、その名残です。
わずか 1年での開通
陣頭指揮は技師野辺地久記
担当技師は京都生まれで、アメリカのフィラデルフィア・ペンシルバニア大学で鉄道技術を学んだ野辺地久記。明治21年(1888)に九州鉄道の技師として招かれた後、明治23年に(1890)に豊州鉄道の技師長となりました。一度は辞職しシャム国(タイ)へと赴きますが、明治27年(1894)に帰国後、石坂峠を含む、行事(廃駅、現・行橋駅の北側)-伊田線の敷設に陣頭指揮であたりました。わずか1年での開通は、野辺地の力によるものが大きかったといいます。
鉄道ファンの
大学生が発見した歴史
実は、石坂トンネルが「九州最古の鉄道トンネル」として知られるようになったきっかけは大学生の発見でした。
関西在住だった大学生は全国の鉄道の歴史を調べ、鉄道遺産の保存活用などの活動を行っていましたが、自身が発案した「トロッコフェスタin あか村」をきっかけにして、九州鉄道田川線(現・平成筑豊鉄道)崎山-油須原間に九州最古の鉄道トンネルが存在していることを発見。平成11年(1999)に国の登録文化財となり、世に知られるようになりました。若き鉄道ファンの思い通じて、九州最古の鉄道トンネルは、今も現役として輝いています。
DATA
所在地/福岡県田川郡赤村 平成筑豊鉄道
(豊州鉄道 → 田川線)
完成年/明治 28年(1895)
管理者/平成筑豊鉄道
<施設の形式・諸元>
煉瓦トンネル(トンネル坑門、複線断面)
延長/ 33.2m