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FUKUOKA 42

金堀谷掛樋

福岡県八女市黒木町今花宗溜池導水路

昭和 9 年の大旱魃が
地形を越えた利水の原動力に

戦前の志を継いで完成した
西日本屈指の花宗溜池

昭和9年7月から9月にかけ、西日本は大旱魃に見舞われました。
そのほとんどが水源を矢部川およびその支・派流に頼る流域では農業用大貯水池築造の機運が一気に高まり、昭和12年(1937)に予算額85万円の県営事業として、八女市黒木町本分の「花宗溜池」建設工事が着手されました。しかし、やがて戦争へと突入し、戦後も物資・人員不足から事業は長期化。着工から15年の歳月を経て、従事人員延60 余万人、総工事費1億7千余億円をかけ、昭和27年(1952)にようやく完成に至ります。
その総貯水容量360万㎥は農業用溜池としては西日本屈指のスケールで、管理者の花宗用水組合を通じ矢部川流域約1,500haの水田に灌漑用水を供給するほか、上水用調整池として活用されている「犬山ダム」とも呼ばれているアースダムです。

山の中を続くコンクリート水路

山林の中を農地へと水を届ける
コンクリート水路

懸樋(かけひ)は、用水が川や谷を渡る場合に架ける水道橋の一種のこと。
「金堀谷掛樋」は、「花宗溜池導水路」の中間、八女市黒木町今に掛けられたコンクリート水路です。黒木町を流れる笠原川山中堰から同町豊岡の花宗溜池までの延長は7.47km にも及びます。工事は戦から行われており、険しい山間部の谷に資材を運んでの難工事であったことに思い至ります。
旱魃の経験から、灌漑地を広げていくために地形を克服し、溜池の水を農地へと導いた象徴となる土木遺産です。

DATA

所在地/福岡県八女市黒木町今

花宗溜池導水路

完成年/昭和 10年代

設計者/花宗用水組合

施工者/花宗用水組合

管理者/花宗用水組合

<施設の形式・諸元>

コンクリート水路

水路幅/ 1,050mm

水路高/ 1,100mm

水路延長/ 39.1m