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FUKUOKA 43

長野隧道

福岡県八女市黒木町犬山国道 442 号

ダイナマイトでも崩れぬ岩盤
明治 22 年完成の素掘りのトンネル

石のトンネルを抜けると
ずらりと並ぶ八女石灯籠

切通し(きりどおし)とは、山や丘などを部分的に開削し、人馬の交通を行えるようにした道です。
「長野隧道(犬山隧道)」は、八女郡役所時代の明治22年(1889)、矢部道路の長野村・犬山間の切り通しに掘られた隧道で、工期約1年、工事費400 余円で完成しました。トンネルは、平成の大合併で八女市となった黒木町と旧八女市を繋ぐトンネルでもありました。両側は垂直で岩盤を穿った素掘りの跡が浮き出、天井はアーチ型。短くも印象的です。
旧八女市側に出ると伝統工芸の「八女石灯籠」が並び、石材屋が軒を連ねています。名匠橋本勘五郎が八女の地で石橋を架けながら指導した、長野石工集団が暮らした長野集落です。今から9万年前、阿蘇山の大噴火による火砕流は、九州一円を覆い、この地で堆積したのが「長野石」と言われる阿蘇凝灰岩で、加工しやすいこの石を使った伝統工芸が発展しました。

岩盤を穿ったトンネル

モータリゼーションの洗礼の
幕開けとなった道路整備のひとつ

郡役所時代の土木工事としては、明治19年に久留米・熊本間の国道(現・国道3号)、21年に福島・若津間の県道(現・国道442号)、そして翌年22年に長野隧道、瀬高・西牟田線(現・筑後市、瀬高・久留米線)、23年に福島・北山間(現・立花町、八女・瀬高線)の開通など、道路網の整備が一気に進められました。さらに、国鉄(現・JR)羽犬塚駅から馬車で繋ぐ南筑馬車鉄道(後に南筑軌道)、久留米から三井電気軌道(後の西鉄福島線・甘木線)も通じます。
慶長6年(1601)に筑後藩主として入国した田中吉政の支城「福島城」の城下町として繁栄した八女福島は、吉政・忠吉二代にわたりわずか20年の短い治世の間に陸路、水運を整え、交通の要衝の地、物産集積地となりました。その八女福島が、大正、昭和へと、さらなるモータリゼーションの洗礼を受ける幕開けとなった隧道です。

八女伝統工芸館の八女石灯籠

DATA

所在地/八女市黒木町犬山 国道 442号

完成年/明治 22年(1889)

設計者/八女郡役所

管理者/福岡県八女土木事務所

<施設の形式・諸元>

延長/ 41.0m

幅員/ 7.3m