FUKUOKA 04
遠賀川河口堰
福岡県水巻町・遠賀町(遠賀川)
治水・利水・塩害防止
3 つの使命をもつ可動堰
洪水と大渇水の歴史
工業、農業の発展は堰とともに
遠賀川は福岡県嘉麻市の馬見山を源とし、筑豊地方から北へと流れ響灘へ注ぐ全長61km の一級河川です。
流域には洪水の歴史が数多く残り、水巻町といった地名にもその記憶が刻まれています。昭和28 年(1953)6 月、阿蘇山、英彦山を中心に、総降水量1,000 ミリを超える記録的な豪雨により、筑後川をはじめ戦後最大の被害となった「28(にっぱち)水害」 は、遠賀川流域にも家屋流出・全半壊953 戸、浸水家屋3 万9千戸あまりと甚大な被害をもたらしました。
一方、昭和42 年(1967)、43 年(1968)には、大渇水と記録的な旱魃(かんばつ)を経験します。
昭和55 年(1980)、「治水」、「利水」、そして貯水池、農地、工業用水への海水の流入を防ぐ「塩害防止」の3 つの使命により、遠賀川河口堰本体は完成しました。
総貯水量 1,114 万㎥の水がめに
アユやサケが遡上する魚道あり
堰の長さは517m。コンピュータ制御による可動堰で、大雨の時には1 門の幅46.5m、重さ250t の制水ゲート7 門と調節ゲート1 門の全8 門を開け、洪水を響灘へと流します。普段は制水ゲートを閉め、遠賀川河口から昭和4 年(1929)に新日鐵用水堰として建設された中間堰(なかまぜき)までの9.3km に水を貯め、取水した真水を頓田貯水池へと送り、2 市4町の生活用水と北九州市の工業用水を確保しています。その総貯水量は1,114 万㎥と、まさに北部九州の水がめです。
1,026k ㎡の面積を誇る流域では川とまちを繋ぐ活動が盛んで、遠賀川流域宣言では「私たちは、水源の山々から海まで、つながり響き合う、生命の環を育てます」と謳われています。象徴する例が、海と川の生物の唯一の通り道「魚道」で、平成20 年(2008)より地域での協議を重ねて生き物が淡水と海水を行き来しやすい構造に改良され、自然観察を楽しめる汽水域は「遠賀川魚道公園」として親しまれています。
アユやサケが遡上する昔ながらの遠賀川。生き物と共生する土木技術とその取り組みはグッドデザイン賞を受賞しています。
DATA
所在地/福岡県水巻町・遠賀町(遠賀川)
完成年/昭和 58 年(1983)
設計者/建設省遠賀川工事事務所
施工者/本体:大林組・奥村組
管理者/国土交通省遠賀川河川事務所
<施設の形式・諸元>
可動堰、鋼製ローラゲート
堤高/ 6.5m
堤頂長/ 399.9m
堤体積 / 66,000 ㎥
流域面積/ 938.6 k㎡
湛水面積/ 294ha
総貯水容量/ 11,140,000 ㎥
有効貯水容量/ 8,840,000 ㎥