KAGOSHIMA 20
丸池湧水暗渠
鹿児島県姶良郡湧水町木場地内(栗野駅)
日本名水百選の水を通す
小さいながら立派な煉瓦と石の暗渠
必要最小限な断面で
2 連のアーチという遊び心
丸池湧水暗渠は、JR肥薩線栗野駅の下を横断する2 連の煉瓦アーチ暗渠です。丸池湧水から流れてくる水量に応じた暗渠の断面を、軌道の高さによる制約の中で確保するために、小さな断面の暗渠を2 本並列させたものと推察されます。
湧水量に多少の季節変動はあっても、自然河川の水量のような急激な変動や流木などの流下物もないことから、必要最小限の断面としたようです。しかしながら、煉瓦4 重巻のアーチ環に石積みのポータル、上流側のアーチの間には、石橋に見られるような石製の小さな水切り(写真上)も備えています。
霧島山麓に降った雨が
35 年の歳月をかけて湧く水
1 日で約6 万t の水が湧き出し、栗野地域のほぼ全体の生活水として利用されている丸池湧水は、霧島山麓の栗野岳に降った雨が地中を流れ、約35 年の歳月をかけ湧水したもの。春は桜、初夏はホタルの名所として知られています。
その水が流れるところとして、設計者の思いが伝わる暗渠です。
DATA
所在地/鹿児島県姶良郡湧水町木場地内(栗野駅)
鉄道線/JR肥薩線(吉松-栗野間)
完成年/明治36 年(1903)
管理者/JR九州
<施設の形式・諸元>
煉瓦拱渠(石ポータル)
延長/ 67.4m 内幅/ 0.92m×2 連
拱矢/ 0.45m 煉瓦4 重巻(厚47 ㎝)半円形
内高/ 1.2m