KAGOSHIMA 33
広瀬川(砂防)二号堰堤
鹿児島県肝属郡肝付町北方地内
終戦の年に完成した
連石積みの大型砂防ダム
終戦の年に完成した
二号堰堤
鹿児島県には、「シラス」と呼ばれる、約3 万年前に姶良カルデラから噴出した大規模火砕流堆積物の台地が広く分布しています。雨が降ると、荒廃した渓流から軽石質の土砂礫が流れ出し、下流域に災害がおこることから、砂防工事は極めて重要でした。
広瀬川では、下流域の旧内之浦町(現・肝付町)における土石流災害を未然に防ぐために、昭和15 年(1940)に一号堰堤が、終戦の年である20年(1945)に二号堰堤が完成しました。
物資乏しい時代に造られた
間知積みの堤体
広瀬川(砂防)二号堰堤は、堤高9.5m、堤長45.0m の練石積み(ねりいし
づみ・石と石の間をコンクリートで固めたもの)の砂防堰堤です。
間知石(けんちいし・底面が一辺30cmの正方形などに加工した規格石材。6 つ並べると180cm=一間になることからついた名称)が整然と積まれた堰堤には、大小の水抜孔が数箇所備えてあり、水抜孔からは常時多量の水が放流されています。現在であればコンクリート擁壁ですが、戦時中で物資が乏しい時代に造られた堅牢で大型の堰堤は、防災へ対する技術者たちの熱意を感じさせます。
水抜き穴から流れ出る水は涙のようでもあり、その配置から泣いている顔のようにも見えます。一度その役割を知ると、土砂災害を防ぐため、緑に囲まれた渓流で人知れず頑張っている表情にも見えてくる砂防堰堤です。
DATA
所在地/鹿児島県肝属郡肝付町北方地内
二級河川 広瀬川
完成年/昭和15 年(1940)
<施設の形式・諸元>
石積砂防堰堤
高さ/ 9.5m 幅員/ 45.0m
貯砂量/ 49,000 ㎥