KUMAMOTO 18
第一白川橋梁
熊本県南阿蘇村大字立野、大津町大学外牧
震災復興のシンボルとなった
100 年の風景を受け継ぐ橋梁
昭和2年完成
国鉄初の剛製アーチ橋
第一白川橋梁は、南阿蘇鉄道高森線の立野-長陽駅間の、白川渓谷に架かる鉄道橋です。北向山原生林の中、赤茶色のアーチ橋が浮かび上がっています。
初代の橋梁が架けられたのは、昭和2年(1927)。日本国有鉄道最初の、2ヒンジスパンドレル・ブレースド・バランスドアーチと呼ばれる鋼製アーチ橋でした。水面からレール面までの高さは約62m。同じ九州の宮崎県高千穂鉄道高千穂橋梁が昭和47年(1972)に完成するまで、長きに渡って日本一の高さを誇っていました。
渓谷は、切り立った絶壁で、その険しさと深さに驚嘆させられます。
張り出し工法と
3万9,986本のリベット接合
両側の橋は谷の斜面に組まれた足場の上で架設し、中央部は足場を用いずに、両側から釣竿を伸ばすように跳ね出して行き、中央で閉合するという、日本で最初に用いられた「張り出し工法」で架けられました。部材はリベットで接合され、その数は3万9,986本にものぼりました。
鉄道省時代の技術陣の革新と意気込みが感じられるその姿は、残された数少ない戦前の橋梁として、時代を越えて人びとを魅了してきました。
色、形はそのままに
耐震性を備え蘇った橋梁
しかし、平成28年(2016)4月に発生した熊本地震によって、南阿蘇鉄道も甚大な被害を受けます。第一白川橋梁は、多くの部材が座屈、変形、破断を起こし、撤去、架け替えを余儀なくされました。
解体は、地盤の歪み、変形による未知の引重力と衝撃的な変位の可能性がある難工事となりました。初代の形や色、稀少な2 ヒンジスパンドレル・ブレースド・バランスドアーチの構造を受け継ぎながら、耐震構造や強度、安全性を向上させた設計、施工のもと、震災から7年経った令和5年(2023)3月、新しい第一白川橋梁が完成しました。
7月15日、南阿蘇鉄道は全線での運転を再開。第一白川橋梁を渡る列車の風景は蘇り、立野橋梁とともに熊本地震復興のシンボルとなっています。
DATA
所在地/熊本県南阿蘇村大字立野
南阿蘇鉄道 白川
完成年/昭和2年(1927) → 架け替え 令和5年(2023)
設計者(初代)/鉄道大臣官房研究所
施工者(初代)/鉄道省(直轄施工)、大阪汽車製造株式會社
鋼材(初代)/八幡製鐵所
管理者/南阿蘇鉄道
<施設の形式・諸元>
鋼スパンドレル・ブレースト・アーチ(2ヒンジ、バランスト、上路)
下部工(橋台・橋脚)/鉄筋コンクリート
橋長/ 152.15m
最大支間/ 91.27m
径間/ 30.44m+91.27m+30.44m+12.05m