KUMAMOTO 19
鼻ぐり井手
熊本県菊池郡菊陽町 曲手-辛川 白川
渦を巻き上げ泥土は下流へ
川底に溜めない維持管理の革新
岩盤を掘削した
井手の深さは20m
鼻ぐり井手は、白川中流左岸の馬場楠井手の曲手-辛川間にあり、加藤清正の手による治山・治水事業(技術)のひとつで、熊本平野特有の火山灰土壌による泥土の堆積から灌漑用水井手の維持管理のために考案された遺構です。
慶長13年(1608)に掘削され、当時、215 間(約390m)の区間は岩山を掘削したため両岸は切り立っていました。地上から井手底までの深さは約20m におよび、泥土がつまると、それを除去する作業は困難を極めました。
そのため考案された仕組みが、水力を利用して井手底に堆積する土砂をつぎつぎに下流へ排出する「鼻ぐり」です。
連続する水流穴にぶつかって
巻き上がる渦
その構造は、岩盤を約4 ~ 5m 間隔に幅約1m、高さ約4mの橋のように残し、その下辺に直径2m 強の水流穴をくり抜いたもの。水流が穴の壁にぶつかった際に、渦を巻き上げ泥土と一緒にはき出されることにより、川底に溜まらない仕組みが生れました。鼻ぐりという名は、その形が牛の鼻ぐりに似ているところからついたものです。
また、大雨等による不要な水は、鼻ぐり上流で「吐」と呼ばれる構造によって調節されて白川へ排出される一方、灌漑用水が足らないの場合は、分水路を通して下流域で合流させる仕組みが施されています。
この鼻ぐりは当初約80ヶ所設けられていましたが、江戸時代末期に水理を知らない役人によって約50ヶ所が打ち壊され、現在は24ヶ所あまりが残り、全国無類の遺構といわれています。
現在も、馬場楠堰で取水された水は、鼻ぐり井手を通って12kmの用水路により白川左岸の水田を潤しています。
DATA
所在地/熊本県菊池郡菊陽町 曲手~辛川
完成年/慶長13年(1608)
設計者・施工者/加藤清正
管理者/馬場楠堰土地改良区
文化財指定等/町指定文化財(史跡)
<施設の形式・諸元>
水路
堆積土の排出技法。24 箇所が現存