
KUMAMOTO 33
三角西港
熊本県宇城市三角町三角浦護岸/(旧)三角港
明治三大築港のひとつ
現存する日本最古の港湾史跡

天草の砂岩で石工たちが築いた
切り石積みの港
三角西港は、熊本県宇城市の宇土半島先端にある港湾施設です。明治に入り、熊本に派遣されたオランダ人技術者ローウェンホルスト・ムルデルは、県令の大規模な港を築きたいという意向を受け、熊本市の百貫石港を視察しました。しかし、大規模な築港に適さないことを見抜き、代わりに選び進言したのが三角西港です。
明治17年(1884)に築港工事に着手し、約3年間の突貫工事の末、明治20年(1887)に開港しました。工事に当っては、地元の石工たちによって天草諸島の大矢野島にある飛岳から切り出した砂岩を材料に、埠頭や排水河川、橋などが造られ、背後に洋風建物からなる街並みが広がっています。国費が投じられて築港した、宮城県の野蒜築港、福井県の三国港とともに明治三大築港のひとつに数えられ、現在も残る全国唯一の港湾史跡です。

切り石積みの岸壁
廃れたことで時がとまった
開港時代の風景
西港は背後に山が迫っていたため、明治時代後期には整備された東港へと港湾機能は移りますが、わずかな間で発展し廃れたことにより、逆に当時の風景を色濃く残すことになりました。
開港当時の雰囲気を物語る、九州海技学院や、明治26年(1893)に小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が滞在した旅館である浦島屋、回船問屋だった旧高田回漕店などの木造の洋風建造物。西港の港湾遺跡の保存を柱に周辺の整備・復元も行われ、NHKのスペシャルドラマ『坂の上の雲』の、ロケ地となりました。同題名の原作は、近代国家として歩み出した明治日本の青春群像を描いた、司馬遼太郎の歴史小説です。
140年あまりたった今も現代の港湾計画の整備手法にとっても多くの示唆を与える港で、九州・山口の近代化産業遺産群の一つとして「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産となっています。

三角港内の水路

DATA
所在地/熊本県宇城市三角町三角浦 三角港
完成年/明治20年(1887)
設計者/ローウェンホルスト・ムルデル
管理者/宇城市
文化財指定等/国指定重要文化財、土木学会選奨土木遺産
<施設の形式・諸元>
長/730m 高/6.36m
石積は5分の勾配で面が50cm角の切石を根石から16段に積み上げ
岸壁の頂部は延長1.8m、幅0.9m、厚さ0.5mの巨石を縦敷、
横敷の交互に組み合せ
